:Phase-23 「戦火の蔭」妄想版
本編のシナリオがあまりにも酷かったので、テキトーに妄想でっち上げてみました。 あまり蔑ろにするものアレなのである程度加味しつつ、ハイネの扱いに重点を置いてみました。 なにぶん初めて書くSSなので稚拙な部分は多々あるでしょうがご容赦を。

Phase-23 「戦火の蔭」
-

ダーダネルス海峡上空

ミネルバの艦首砲「タンホイザー」を撃ち抜き、舞い降りた青き翼の機体。 ミネルバは唐突のアクシデントにダメージコントロールに追われ、戦場を駆っていたパイロット達は、その突然の乱入者に驚きを隠せない。

「フリーダム!?キラ?」
それはかつて共に戦場を駆けた友の機体。 カガリを連れオーブを離れて姿を隠していたはずのキラが何故この戦場に… しかもミネルバに直撃させた?
即座に回線の周波数をかつてのフリーダムに合わせ呼びかける

「キラ? キラ! 聞こえるかキラ!」
返事はない。 以前の周波数から変更しているのか、向こうが回線を閉じているのか? それともNジャマーの影響化にある地球ではこの距離の通信は難しいのかもしれない。 とにかく呼びかけるしかない
「キラ! 応答しろ、キラ!」

-

「何なんだあれは!いきなり!」
コクピットのシンは動揺していた。 突如として現れ母艦を狙撃した初めて見る機体。 いや、初めて見る機体なはずだった。 しかしインパルスのコンピュータは音紋からデータベースを検索し結果をコクピットのモニターに表示させる。

 ZGMF-X10A FREEDOM

「フリーダム? 二年前にヤキンで戦っていたというフリーダム?あれが?」
示された情報が記憶の糸をたぐり、かつての記憶が呼び起こされる。 あの忌まわしきオーブでの出来事。 家族を、妹を、奪い去ったあの時。

 あ の 機 体 は 確 か に そ こ に い た 。

その機体が何故、今ココに。 わからない。 だがアスランなら、かつてジャスティスを駆りフリーダムと共に戦っていたアスランなら何か知っているかもしれない

「隊長! じゃなかった、アスランさん! あれは、あの機体は!」
返事はなかった。 ただ開いた回線から、あの機体「フリーダム」に呼びかけるように叫ぶアスランの声だけがセイバーから返されるだけ。
「キラ! 聞こえたら返事をしろキラ!」

-

ミネルバドック内で出撃待機をしているハイネは、混乱するミネルバ艦内で一人笑みを浮かべる。
「フリーダム、それにアークエンジェル。 こんなに早く会えるとはな…」
ダメージコントロールと、戦場の変化についていけていないブリッジにハイネが通信を入れる

「艦長、俺は出ますよ。 良いですね?」
「! ちょっと待ちなさい! 状況がつかめないのに今出撃させるわけには…」
「こっちにはこっちの事情ってものがあるんですよ、ハッチを開けてください」
「…艦長」

不安げにメイリンがタリアの表情を伺い、タリアは一つため息をつく
「今艦内がこれ以上混乱するのは、好ましくないわね… 仕方ないわメイリン、彼を出撃させて、私がFAITHと言っても彼の行動まで律することは出来ないから」
「わかりました、グフ・イグナイティッド ハイネ機出撃準備願います」
「どうなってるのかしらね…この状況は」
タリアには状況を見守るしかなかった。

-

「オーブ軍は今すぐ戦闘を中止せよ! 軍を退け!」
そのころ、戦場ではオーブ軍に更なる衝撃が走っていた。 突如として現れた戦艦から出撃した機体「ストライク・ルージュ」にあのカガリ・ユラ・アスハが乗っているというからだ。

「カガリ様!?」
「カガリ様なのか?」

「カガリ!?」
キラに続いてカガリまでもこの戦場に? 今の彼女は戦場に出てくる人間ではないはずなのに、何故?

戦場のMSパイロットが皆カガリに気を取られている中、シンは一人だけその声が耳に入っていなかった。 あのにっくきアスハの娘の声。 忘れようハズもないその声さえも今のシンには届かない。 あの機体、フリーダムから目が離せないから。
「キラ…それがあの機体のパイロットの名前?」

カガリの戦闘停止要求が続く最中、展開するミネルバのカタパルトデッキ
「ハイネ・ヴェステンフルス、グフ! 行くぜ!」
橙色の閃光のごとく、オレンジに彩どられた機体、グフ・イグナイティッドが滑空する!

-

タケノミカヅチでユウナは狼狽していた。 あのカガリが、僕のカガリが、僕の邪魔をするというのか? 否定するというのか!?
連合艦隊からはネオ・ロアノークから事の弁明を求められている。
冗談じゃない、ここで退いたら今度は連合軍に討たれる。 前にはザフト、後には連合がいるんだ。 今ココであやふやな立場なんて取れるはずが無い。
そんな僕を…オーブを危険に晒すような真似…カガリがするはずがない

「あれは…あれは知らない! あんなものわが軍には関係ない!」
 あのカガリが僕に恥をかかすわけがない 
「ユウナ様!何をおっしゃいますか!」
「あれはストライクルージュ!あの紋章もカガリ様のものなんですよ!?」
「だからといって、何でカガリが乗ってるって事になるんだよ!?」
「ユウナ様!」
「なにをしている! 早く討て馬鹿者!!」
「アナタという人は…!」
「じゃなきゃ、こっちが連合軍に討たれる!」
「!」

トダカは言葉に詰まった。 この男ユウナは支離滅裂なことばかり言い始めている、しかし、この言葉は真理だ。 今軍を退けば間違いなくわが軍は連合にも討たれる。 今は信じるしかできない。 カガリ様を、フリーダムを。
「ミサイル照準。 アンノウンMS!」
「トダカ一佐!」
「我らを惑わす、賊軍を討つ!」

「たのむぞ、フリーダム。」
その一言は誰にも聞かれないくらい小さな声で祈るようにささやかれた。
「てぇーー!!!」
オーブ艦隊から翼を穿つ砲弾が放たれる。
同時刻、ユウナの言葉を聞いたネオはMS出撃準備を完了させていた。

-

オーブ艦隊からのミサイルをフリーダムが全部撃墜するさなか、ハイネの駆るグフは敵味方の視線をかいくぐるように海面スレスレの超低空飛行で一直線に向かっていた。

「あれは、ハイネ?」
いつの間に出撃したんだ? しかもあの方向… フリーダムの元へ向かっている? 何を…!
「おい! 待て!ハイネ!」
アスランはグフを追わせうようにセイバーを向かわせる。 友の機体の元へ。

「アスランさん!? ハイネ隊長も!?」
あのフリーダムという機体、一体何なんだ、シンは気になるがオーブ軍が再び動き出した今、ココを動くわけに行かない。 ミネルバを守らないと
「何やってるんだよ、あの人は!」
そう吐き捨てながら、シンは迫り来るムラサメ達の迎撃についた。

ミネルバの方は、ルナマリアとレイのザクを甲板に上げ迎撃体制をとる。 とにかく今はしのぐしかない。
「どうなってんのよ!もう!」
「連合もMSを出したんだ、迷ってると死ぬぞ、ルナ!」
「わかってるわよ!」
この男は苦手だ!

-

キラはミサイルの爆煙の下、橙色の機体がコチラに向かってくるのを確認していた。
「こっちに…来る?」
武装とスラスターに照準を定め、ビームライフルを放つ。 しかしグフは機体を旋回させながらその攻撃をしのぐ!

「無駄なんだよ! そんな殺気のない攻撃はな!」
右手に仕込まれたドラウプニルを散発させ肉薄するグフ。 キラはフリーダムにシールドを構えさせたまま上空へ退く。 刹那背中のウイングバインダーを展開させハイマットモードへ移行させる。

「そんな羽飾りで!」
ハイネはグフのスラスターを全開にさせ一気にフリーダムへ詰め寄る。 旋回性能をはね上げるハイマットモードの前ではいかに最新鋭の機体、グフでもついていくことは出来ない。 ならば振り回される前に一気に詰め寄る!

「くっ!」
事実それは戦法として有効だった。 一撃離脱で攻撃を繰り返すグフにフリーダムは避け切ることが出来ない。 中距離のビームも全てかわされてしまう。 まるでこっちが相手のコクピットを狙わないことを知ってるかのように。

「お前がいると、イロイロと面倒なんだよ! フリーダム!」
四度目の斬撃を放つグフ

「このお!」
フリーダムのビームがグフのソードを貫いた。 しかしグフはソードを即座に離し爆発させる!
「!?」
その爆煙を切り裂くように一本のロッドがフリーダムのライフルに絡みついた

「つかまえだぜエ!」

-

第一陣として向かっていた部隊を難なく撃墜したシンは、残骸と化したムラサメを苦々しく見つめながら、フリーダムの方へカメラを向けた。
「あれが戦っている? ハイネさんと?」
その戦況を見つめる間もなく、ロックオンアラートがシンを戦いに呼び戻す。  この機体、あの部隊か!
「カオス!」
「今日こそ、沈めさせてもらう!」

-

「そうら!しびれろお!」
絡みついたグフから電撃が放たれ、スパークするフリーダム
「があ! だけど、だけどこれくらいで!」
「そうか? このスレイヤーウィップしびれるだけじゃないんだぜ!?」
接触しているせいか、相手の通信がコチラに介入してくる。 この男がこの機体のパイロット!?

「お前がキラ・ヤマトくんか。 案外普通の少年なんだな」
「アナタは!? 僕を知っている?」
「名前とデータを貰っただけさ。 フリーダムを消せって言う任務と一緒にな」
「!?」
「それより、いいのか? こんなお喋りしてて?」
「こ…これって!?」
キラは驚愕した、フリーダムのエネルギーゲージがいつの間にかレッドゾーンに入っている。 核エンジンを搭載したフリーダムにあり得ない事態のはずっ!

「詳しい技術ってのは良くわからないんだけどな、コイツには中性子の動きを強制的に停止させる仕組みってのが入っているらしいんだ、NJCの内側からNJの効果を発揮させるって言うのかな? それでお前ご自慢のフリーダムは核エンジンを止まっちゃったってワケ」
「この機体と任務を渡してくれた人は言ってくれたよ、これはアンチガンダムなんだとよ! ザクとは違うんだぜ!ザクとはな!」

ハイネの啖呵とともにフリーダムはその色を失っていく、PS装甲が落ちたのだ。
「くう!」
キラはビームライフルを諦め手放すと同時に爆発させた。 とにかく今は離れないとどうにもならない。
「逃がすかよ!」
パワーダウンしたフリーダムはグフから逃げ切れない! もう一本のスレイヤーウィップがフリーダムを打つ!
「もらった!」
グフがトドメのドラウプニルを放つ! しかし、その攻撃は届かない。

「アスランっ!」
ハイネは苦々しく叫んだ。 その攻撃をセイバーが防いだからだ。
「止めろハイネ! 今この機体を討つ必要はないはずだ!」
「ちっ!」
ハイネにとっては想定はしていたがあまりよくない状況だ。

キラは一瞬状況がつかめない。 やられたと思った瞬間、あのオレンジの機体と同じザフトのMSが守ってくれたからだ。
赤い機体、オーブ沖での戦いのように守ってくれた赤い機体。

「アス…ラン?」

この一瞬が状況を分けた。 ハイネがフリーダムを一瞥しアークエンジェルに向かったからだ。

「アスランがいるとなると、アレを落とすのはムズかしいな。 残念だがあれは後回しだ。 第一の目標をやらせてもらう!」

この瞬間キラはハイネの真の目的を理解した。 そして一瞬でも赤い機体に気を取られたことを後悔した。
「ラクス!」
アレは、ラクスを狙っている!

-

カガリは哭いていた。 叫ぶでもない、泣くでもない。 父が、自分がもっとも見たくなかった光景が繰り広げられているからだ。 戦争に駆り出され、討たれ、消えていくオーブの民の命。 その凄惨な光景がカガリの胸を切り裂いていた。

呆然と滞空するストライクルージュを一瞥しハイネは言う
「オーブの姫君は、標的じゃないからな。 議長のお気に入りでもあるようだし、せいぜい死なないようにな。」

-

「艦長、ザフトMSが一機こちらにむかっています。 距離3000」
「ザフトが? いきなり艦首砲撃ち抜いちゃったから無理もないわね。 イーゲルシュテルン起動。 とにかく、追い返して。」

ハイネはグフのカメラズームを最大にしてアークエンジェルのブリッジを確認していた。 ギリギリで鮮明度は悪いが、目標は確認できる。 あんなピンクの髪の女、早々いるもんじゃない。
「見つけましたよ。 ザフトの歌姫様」

グフを渡してくれた人物から受けた任務は二つ。 ラクス・クラインの暗殺とフリーダムの破壊。 ラクスが二人いることはあの人にはイロイロと不都合らしい。 もう一つフリーダムは「核」を積んでいる。 かつてザフトが生み出してしまったMSが今禁止されている「核」を積んで動いていることは世論的にもイロイロ問題があるそうだ。 まあ俺にはそんなことはどうでも良いんだがな。

グフは元々近距離用のMSだ、残された武装は多くない。 ドラウプニルの届く距離まで近づく必要がある。 幸い厄介なフリーダムはパワーが戻りきっていないから追いつけないし、他に艦載機がいる様子もない。

「迎撃! 当てないでよ」
「やってみます」
アークエンジェルのイーゲルシュテルンとミサイルがグフに迫る。 が難なくそれを避けるグフ。

「言ってるだろうが! 殺気のない攻撃など無駄なんだと!」
だがその攻撃に気は取られた。 その間に一機のMSが出撃していた。

「早々やらせるわけにはいかんのでな!」
MA状態のムラサメは一気にグフに肉薄していた。
「金色のMSだと!? 生意気なんだよ!」

ムラサメの突撃とも言える攻撃を横に躱した瞬間それはそこにいた。

 フリーダム

追いつけないはずのフリーダムがそこにいた。 色は未だに失ったままだ。 だがその右手にはビームサーベルが握られている。
コクピット直撃軌道のそれは、ムラサメの攻撃をかわし死に体になっていたグフには避ける事が出来なかった。

「バカっ…なっっ!!!」

胴を横一文字に切り裂かれ、グフは爆発した。
その爆砕する橙色の機体を目撃したアスランが叫ぶ。
「ハイネーーーーーー!!」

- 後半へ続く

↑TOP